形態

倉谷 滋Kuratani Shigeru

Recommendation

  • Ernst Haeckel
    『Generelle Morphologie der Organismen』
    (De Gruyterリプリント版 1988)
    *『一般形態学』の抄訳は、佐藤恵子『ヘッケルと進化の夢』
    (工作舎 2015)に所載

代遅れとみなされた考え方に
正面から向き合うことで
最先端の進化科学を拓く

Speaker

倉谷 滋(くらたに しげる)

進化発生学/科学史

1958年、大阪府出身。京都大学大学院博士課程修了、理学博士。米国ジョージア大学、ベイラー医科大学への留学の後、熊本大学医学助教授、岡山大学理学部教授を経て、現在、理化学研究所主任研究員。主な研究テーマは、「脊椎動物頭部の起源と進化」、「カメの甲をもたらした発生プログラムの進化」、「脊椎動物筋骨格系の進化」など。著作として『かたちの進化の設計図』『進化する形』『分節幻想』『反復幻想』『ゴジラ幻論』『地球外生物学』などがある。

Kuratani Shigeru

エルンスト・ヘッケルは、ダーウィンの進化論にもとづき生物の形の多様性を科学的に説明づけようとしたドイツの生物学者である。系統樹やミッシングリンクの発想や、エコロジーやモネラなどの造語もヘッケルによるものである。

彼はまた、ゲーテなどの自然哲学やドイツロマン派の影響が色濃いロマンティックな科学者であるとされ、日本にも古くから多くのファンがいる一方で、時代遅れの科学者とみなされることも多い。教科書にもよく引用される彼の「個体発生は系統発生を繰り返す」という、いわゆる生物発生原則も、一時は妄想として科学的に完全否定されたかのようにも見えた。しかし20世紀末、進化発生学が勃興すると、ヘッケルの思想と科学に改めて光が当てられることになる。

倉谷氏もそんなヘッケルに強く惹きつけられた一人であり、『一般形態学』をはじめとするヘッケルの著作を丹念に読み解くことを通じて、進化と発生をめぐる科学の謎に分け入ってきた。倉谷氏によれば、『一般形態学』は、愛妻の逝去による失意を埋めるようにして綴られた大著であり、内容には少なからぬ混乱が見られるものの、生物の多様な「形」を科学的に体系化しようとする壮大な試みであり、その後の膨大なヘッケルの著作群の原点でもある。また、かつてのヘッケルに対する「科学的」な批判も、その批判自体が時代遅れになっており、ヘッケルの著作は、最先端の進化発生学にとっても無視することのできない発想の宝庫であると、倉谷氏は言う。

倉谷氏自身の「形」へのこだわりについては、飛行艇のプラモデルやスマートフォンを例に、機能と形が遊離して均一化した近年の道具のデザインの危うさ、不気味さについて語っていただいた。

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