源流

御立 尚資Mitachi Takashi

Recommendation

  • 坂口謹一郎『古酒新酒』(講談社 1974)
  • 谷川徹三『縄文的原型と弥生的原型』(岩波書店 1971)

本酒と日本文化の
深層に
分け入ることで
見えてくるその多様性と
ビジネスの新たな可能性

Speaker

御立 尚資(みたち たかし)

京都大学経営管理大学院特別教授 /
大原美術館理事

ボストン・コンサルティング・グループ元日本代表。
現在は、「次世代」と「文化」をテーマとして活動。日本酒の熟成文化、燗文化を広めるスタートアップ、(株)熟と燗代表取締役会長。
大原美術館理事、東京藝術大学経営評議員、京都大学経営管理大学院特別教授などを務めながら、安宅和人氏をリーダーとする「風の谷:残すに値する未来」やジャパンタイムスのSustainable Japan Award、瀬戸内デザイン会議などの地域に関わる運動にも従事。

Mitachi Takashi

坂口謹一郎は、農芸化学者にして、発酵、醸造に関する研究では世界的権威の一人であり、一般には「酒博士」と呼ばれた人物。
『古酒新酒』は酒文化についての坂口の代表的エッセイ集であり、世界各国の酒についての多彩な随筆が含まれているが、通読することで世界の酒文化における日本酒のユニークさが鮮やかに浮かび上がるものとなっている。

一方、谷川徹三は、東京国立博物館や民芸運動などにも深くかかわった哲学者。詩人の谷川俊太郎はその長男。芸術論集『縄文的原型と弥生的原型』では、日本文化を俯瞰しつつ、そこには縄文的なるものと弥生的なるものの二つの焦点があることを指摘した。とかく禅やワビ・サビというスタティックでいわば弥生的な側面が強調されがちな日本の美意識は、狩野派と水墨画、日光東照宮と桂離宮、北斎と広重などの対比に象徴されるように、より多様で複雑なものであることを説いた。

海外での経験が豊富で、ワインにも造詣が深い御立氏は、この2冊の本を通じて日本酒と日本文化にあらためて出会いなおすことになる。明治以降の酒税法のもとでの一級種や二級酒などのアルコール度数による分類、あるいは近年では純米や吟醸という指標が、五感によって味わう日本酒本来の価値を見えにくくしていた。また江戸時代以前には普通であった熟成酒の存在も、一般には忘れられつつあった。

御立氏は、ワインやウイスキー以上に多様でユニークな日本酒の世界、そしてそれを支えてきた日本文化の深層に触れることで、これまで一面的にとららえられ、その本質が見過ごされてきたからこそ、そこに新たなビジネスとしての「伸びしろ」を見出し、日本と日本酒を自らのライフワークとすることを決意。全国各地の酒蔵をまわって自身の五感により酒を選びこんで、2023年、熟成酒を提供する場として「熟と燗」をオープンした。

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